ニューノーマルな生活における痛みのケア
第4回:「職場や学校でもできる運動と痛みのケア」
2020/12/22
新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態により、働く環境や生活様式が大きく変わりました。制限のある生活を送る中で、知らず知らずのうちにストレスが溜まり、身体的にも精神的にも負荷がかかった状態が続いている方もいらっしゃるかもしれません。
さて今回は、前回に引き続き理学療法士の田野先生に、『ニューノーマルな生活における痛みのケア』と題し、職場や学校、通勤・通学といった外でもできる運動や痛みのケアについてインタビューしました。また、メンタルケアに関するアドバイスも紹介いたしますので、参考にしてください。
子どもたちや学生のメンタルケアは、周囲の大人がサポートすることが大切
Q1緊急事態宣言が解除された後、通勤や通学を再開する人も増えていますが、新型コロナウイルスの感染拡大に対してまだまだ不安を抱えている方は多いと思います。そのような中で、身体面や精神面において、注意しなければならない点について教えてください。
A1人間は変化に敏感な生物です。起床時間の変化や靴を履く生活など、些細なことのように見えても、身体にはストレスがかかっています。ソーシャルディスタンスを意識しての通勤・通学は、より多くのストレスがかかるので、当然、痛みや疲労感が出現しやすくなります。電車であれば足を平行に開いて立つ方が多いと思いますが、少しでも足を前後にずらして立つように心がけてください。接地面を広げることにより、バランスが格段に取りやすくなります。車で通勤されている方は、ドライバーズシートの位置や角度をもう一度見直してください。クッションの使用も一考の余地があるかもしれません。マスク・フェイスガードの使用や他人の目など、いつも以上に気が張っているはずなので、「今までとは違う」ことを自覚しましょう。変化に合わせたケアと十分な睡眠が何より大切です。身体に普段と異なる疲労感や痛みが出ることは当然なので、必要以上に不安にならないことが重要です。
写真1 電車の中での立ち姿勢
Q2制限されている生活の中で、体力を維持するために職場や学校などでできる運動があれば教えてください。
A2職場や学校でできることはかなり限られてしまいますので、体力の維持というより、いかに身体への負担を減らすかという部分に焦点を当てた方が効果的でしょう。そのためには、同じ姿勢を長時間続けないことが重要です。中腰や身体を捻った状態でPC作業をするなど、無理な姿勢はなるべく避けるようにしましょう。また、立って行うアキレス腱伸ばしや座りながらできる臀部のストレッチを、1~2時間ごとに取り入れてみてください。これらのストレッチは、約20秒間呼吸を止めず、持続的に行います。通常は2~3回行うことを推奨していますが、仕事中や授業中であることを考慮すると1回でも良いかと思います。
写真2 立って行うアキレス腱伸ばし
伸ばしたい側の脚を後方に引き、踵をつけたままの状態で前脚の膝をゆっくり曲げていきましょう。壁などで身体を支えながら行うことをおすすめします。アキレス腱が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真3 座りながらできる臀部のストレッチ
伸ばしたい側の脚を浅く組み、膝を外側に倒します。背筋を真っ直ぐにしたまま身体を前方に倒していきます。臀部が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真2 立って行うアキレス腱伸ばし運動
伸ばす側の脚を後方に引き、踵をつけたままの状態で前脚の膝をゆっくり曲げていきましょう。壁などで体を支えながら行うことをおすすめします。アキレス腱が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真3 座りながらできる臀部のストレッチ
伸ばしたい側の脚を浅く組み、膝を外側に倒します。背筋を真っ直ぐにしたまま体を前方に倒していきます。臀部が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
Q3デスクワークで肩こりや腰痛を訴える人が増加しているようですが、職場でできる予防や症状を軽減するための効果的な方法がありましたら教えてください。
A3職場においても、正しい姿勢を意識することや働く環境を整えることが大切になります。ただし、自宅ほど自由に環境を変えることはできません。また職場では、ストレッチの時間や休憩を自由に取ることも難しいと思います。そこでおすすめしたいのは、簡単にできる腕から指にかけてのストレッチです。手首のストレッチや指のストレッチ、そして指の間のマッサージは肩こりに効果的です。
写真4 手首や指のストレッチ①
手のひらを上に向け、反対の手で指を持ち、反らすように伸ばしていきます。その際に、肘が曲がらないように気をつけてください。指や前腕が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真5 手首や指のストレッチ②
指をかぎ型に丸め、反対の手を使い、指の付け根を反らすように伸ばしていきます。指や手のひらが伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真4 手首や指のストレッチ①
手のひらを上に向け、反対の手で指を持ち、反らすように伸ばしていきます。その際に、肘が曲がらないように気をつけてください。指や前腕が伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
写真5 手首や指のストレッチ②
指をかぎ型に丸め、反対の手を使い、指の付け根を反らすように伸ばしていきます。指や手のひらが伸びていることを感じながら、約20秒間持続的にストレッチしてください。
デスクワークが多い場合は、目のケアも大切です。長時間、近距離で焦点を合わせていると、どうしても肩こりに繋がってしまいます。時々、顔を上げて遠くを見ることやブルーライトカット眼鏡を活用することは、目の疲労を和らげてくれます。目が充血しているときはアイシングで冷やし、眼精疲労のときは温めましょう。これらは、就寝時に行っても効果的ですので、ぜひ実践してみてください。腰痛対策については、椅子の硬さや座圧の位置など前回紹介したA6の内容を参考にしてください。
Q4子どもたちや学生が、学校でできる体力維持の方法やメンタルケアについて、どのようなことに注意すれば良いでしょうか。
A4新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、学校行事のみならず、部活動の短縮や大会の中止が続出しました。それを目標に頑張ってきた子どもたちにとって、どれだけ衝撃的でショックだったことか。私も学生時代は、部活動の大会に向けて努力していた経験があるため、本当に心が痛みます。目標を見失ってしまった子どもたちには、周囲の大人によるサポートが非常に大事だと考えます。まずは、運動もしくは部活動を続ける理由や意義を一緒に考えてあげましょう。体力については、通学や体育の授業などにより、さほど低下は見られないと思いますが、メンタル面に関しては心配です。先生や家族のサポートが重要になりますので、子どもたちに異変が見られないか、いち早く気づいてあげてください。今、大人たちにできることがあるとすれば、とにかく純粋に子どもたちや学生が楽しめることを見つけてあげることです。運動だけでなく、ゲームや趣味でも構いません。先生や家族の皆さんには、ぜひご理解頂きたいと思います。
ストレスが筋肉に与える負担を予防・軽減する
Q5サロメチールシリーズは、運動前後の筋肉ケアや肩こり、腰痛・関節痛などに有効な外用消炎鎮痛薬ですが、有効な活用方法があれば教えてください。
A5長時間のストレスは筋肉を硬くしてしまい、身体に余計な負担を与えます。新しい日常の中で、これまでとは異なる痛みを感じることや別の部位に痛みが生じる可能性がありますので、転倒などのアクシデントに繋がることも考えられます。 ストレス性のこりには、ストレッチや有酸素運動、腹式呼吸によるリフレッシュがおすすめです。ストレスで硬くなってしまった筋肉は、赤のサロメチールシリーズでマッサージしながらほぐしましょう。有効成分のサリチル酸メチルやサリチル酸グリコールが血液の流れを改善するため、運動前のウォーミングアップとしても最適です。筋肉の炎症は、それを自覚したときには実はかなり進んでいる段階です。プロ野球のピッチャーが投球後にアイシングするような感覚で、肩や足、腕や手など痛みを自覚する前から塗っておくと良いと思います。 また、変化する生活の中でストレスを感じている場合は、肩こりや腰痛など痛みを覚える部位だけでなく、その周囲の筋肉も無自覚のまま硬くなっていることが多いので、非ステロイド性消炎鎮痛成分「ジクロフェナクナトリウム」を配合した「塗るタイプ」のローション剤やゲル剤などを少し広範囲に塗布すると良いでしょう。
Q6田野先生は、米国で Certified Functional Manual Therapist(認定機能的徒手療法士)という資格を取得されておりますが、どのような施術を行うための資格なのでしょうか。
A61978年に米国で設立された The Institute Physical Art という組織が認定している資格です。試験は米国で受けるのですが、たくさんの方に支えて頂き、私は2016年に日本で働くセラピストの中で3番目にこの資格を取得できました。本当に感謝しております。NPO日本法人(The Institute of Physical Art Japan)が設立され、3年前から私は法人理事として、機能的徒手療法プログラムの啓蒙活動を行っています。この技術は皆さんがもともと持っている身体の潜在能力を最大限発揮できるよう、身体の構造や神経、筋の機能を向上させ、日常動作やスポーツでのパフォーマンスに繋げていくものです。個人的には内臓に対する施術に関心があり、今でも多くの患者さんに施術を行っています。
写真6 認定機能的徒手療法士の認定証
写真7 IPA JAPANのホームページ
Q7田野先生は、食生活アドバイザーの資格も取得されていますが、新しい日常における食生活について、どのようなことに特に留意すべきか教えてください。
A7「健康は食から」と言われますが、私も食事は非常に大切であると考えています。胃や腸などの消化器系はストレスの影響を多分に受けます。特に小腸は「第二の脳」と言われるほど大切な臓器です。どんなに身体に良いものでも、適度な量というのが食事の鉄則です。またグルテンや精製された砂糖、植物油などは身体を炎症傾向に誘導し、痛みを誘発する場合があるので摂り過ぎには注意が必要です。
Q8最後に、新しい日常における、職場や学校での過ごし方など全体にわたって、痛みのケアに関するアドバイスをお願いします。
A8皆さんにとって、痛みの予防や軽減のためにも運動することは大切です。痛みに対応するために、インナーマッスルを強化し柔軟性を保つことのほか、正しい姿勢や動作の知識をインプットして実行することがポイントになります。ぜひ、今後の生活の中で意識して頂ければと思います。
この記事で紹介された製品
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今回の先生
NPO法人IPA JAPAN理事・理学療法士田野 悠介さん
経歴
理学療法士として整形外科勤務を経て、2019年7月1日に田野整体院を開設。田野整体院院長。米国のCertificated Functional Manual Therapist(認定機能的徒手療法士)。食生活アドバイザー。整形外科疾患全般に携わる。