これからスポーツを始めようとしている人のためのトレーニング
第10回「女性の方へのアドバイス&家でできるトレーニング 」
2023/06/05
前回は、「スポーツを始めようとしている人へ日常生活で取り組めるアドバイス」と題して、宮嵜多紀理さんにお話をお聞きしました。今回は宮嵜さんの女性アスリート、女性トレーナーとしての経験をもとに、女性がスポーツやトレーニングに取り組む際の留意点や、女性に限らず一般的に家で取り組めるトレーニングについて具体的にお話を伺いました。
負担の少ない水中ウォーキング
Q1.女性は妊娠・出産というプロセスの中でストレスを抱えることも多いですよね。身体は重くなるけれども、運動不足ではダメと言われるし、どうすればいいだろうという方も多いと思います。
A1.女性には特有の悩みがあって、男性トレーナーにはなかなか話しづらいという面もあるかもしれません。
私の場合は、激しいスポーツの極めつけのような飛込をしていたので、妊娠中でもとくに「動かなきゃ」と意識することはほとんどありませんでした。それでも「外に出たい」という気持ちは強くありました。ですから、散歩やウインドウショッピングをよくしていました。ショッピングモールをぐるぐる歩き回るだけで楽しいですし、広いので相当な運動量になります。いつものようにショッピングモールを一周した翌日、「ああ、お腹が痛い」と陣痛が来て出産しました。
Q2.女性の場合の仲間づくりやコミュニティへの参加方法についてお聞かせください。
A2.たとえばトレーニングジムという場所で考えると、男性がストイックにやっているイメージがあって行きづらいという女性もいるかもしれません。男性と一緒にやったほうが楽しいという人はそこでいいでしょうし、ジムによっては圧倒的に女性が多くて、楽しくエクササイズやヨガをやっているところもあるでしょう。ご自分に合った環境と場所を探してみましょう。お風呂やサウナがあるところがよいとか、トレーニングのあと仲間と連れ立って食事に行けるのがいい等、ご自分のモチベーションになる楽しいことも見つけてください。
女性限定のトレーニングジムもありますし、オンラインでのサービスもあります。家事の合間にできるところがよければ、それに対応したところを探すこともできると思います。ジムやトレーニングは苦手という人でも、歯磨きの間につま先立ちとか、洗濯を干す間は肩や首を大きく動かすことを意識するとか、そういう細かい積み重ねを友人とゲーム感覚で競ってみるのもよいでしょう。
Q3.水泳はいかがでしょうか。
A3.飛込は気軽に取り組む競技ではありませんが水泳はいいですね。プールに入ったら、水中ウォーキングが負担が少なくてよいと思います。水に入ると浮力があるので、地上でウォーキングするよりも膝などへの負担が軽くて済みます。水に顔をつけたくないという人でもできますし。
Q4.ストレス対策として、自律神経のバランスを整えるために、副交感神経を優位にするとよいというお話が前回ありました。そのためのツボもあるということでしたが、交感神経を鎮めて副交感神経優位にするというツボがあるのですか。そしてそれはどこにあるのでしょう。
A4.交感神経を鎮めると副交感神経が優位になり、リラックスできるようになります。ただツボの場所は人によりけり、千差万別です。ですから残念ながら、「ココですよ」と紙面でお伝えすることはできません。またツボ押しは、気の流れをよくするためのものですので、自分で押しても良いですが、鍼やお灸をすることでよりよくなり巡るのです。ですからツボについては、来院していただくしかないですね。置き鍼もいいし、お灸もいいです。
ストレッチ、クールダウン等トレーニングの前後が大事
Q5.具体的なトレーニングを教えて頂く前に、トレーニング前にするべきことはありますか。
A5.トレーニングやエクササイズの指導に入る前に、最初はその方に柔軟性があるかを見ます。身体が硬いと正しい動きができないからです。身体が硬い方は、身体をほぐすためにストレッチから入ります。ストレッチを指導する場合も、「次に来られるまで続けてみてくださいね」というかたちでお帰りいただく、というように段階を踏みます。柔軟性を高めるために筋肉に働きかける治療もありますし、最近はストレッチの専門店なんていうのもありますね。そのように、前段階が必要です。
トレーニングにも順番があって、まずはウォーミングアップをして、身体を温めてから行うと良いです。運動前に身体を内側から温かくしておきましょう。息を上げるために軽くジョギングをしたり、エアロバイクをこぐのもいいですね。これはケガや痛み予防のためでもあります。それからストレッチをします。
トレーニングを終えた後はクールダウンです。軽いウォーキングなどで心拍数を徐々に落としながらまたストレッチという流れがよいでしょう。
Q6.まずはストレッチで柔軟性を備えて、ある程度、身体がほぐれてからトレーニングに入る。そして終わったらクールダウン、というようにトレーニングの前後が大事なんですね。
A6.そのとおりです。そしていよいよトレーニングですが、3つほどご紹介しましょう。最初は、股関節周りです。歩くことが身体を動かすことの基本になりますので、そのために股関節周りを動かしていきましょう。
立った状態で足を前後に開きます。前側の足は膝を曲げすぎないように、膝が爪先より出ないようにして腰を落とし、後ろの足を少しずつ伸ばしていきます。足の位置が決まったら、両手を頭上で軽くつないだ状態で、バランスをとりながら、身体を側屈、つまり片側にゆっくり曲げていきましょう。右足が前の場合、右に倒します。これは股関節のストレッチにもなりますし、脇のストレッチにもなります。体幹のトレーニングとしてもいいですね。
股関節周りをほぐす運動、膝はまげすぎないように
Q7.次は、腰痛予防のために腹筋を鍛えるトレーニングをお願いします。腹筋というときつい、つらいというイメージがありますけれども。
A7.大丈夫です。これはつらくない腹筋のトレーニングです。仰向けになります。足を垂直になるくらいに上げて、そこから膝を90度ほどに曲げます。この姿勢をキープできたら、膝をのぞきこむように上半身を上げます。顔だけではなくて背中から浮かせることがポイントです。そして腕を伸ばして膝を押します。膝は押され負けしないように抵抗してください。膝と手を押し合うことで、腹筋に効いている実感が確実に得られ、鍛えることができます。1セット10秒くらいでいいと思います。セット数は無理のない範囲で行いましょう。
腹筋を鍛えるトレーニング、
上半身は背中から浮かせるようにするのがポイント
Q8.ふつうの腹筋だと30回とか50回とか回数をこなさなくてはならなくて気が重くなって続かないなんていうことがあると思いますが、これだときつさを感じることなくできる気がします。腹筋はもう1種類あるんですね。
A8.はい、次はうつ伏せで行います。いわゆる「プランク」というエクササイズです。
これは足を伸ばした状態でうつ伏せになり、両肘・前腕を床につけて上半身を起こします。つま先を立てるようにして下半身を持ち上げます。頭からかかとまで一直線になるように意識しながら、腕とつま先で身体を支えるこの姿勢を一定時間キープするというもの。通常のプランクだとかなりきついのですが、これを膝をつけてやってみましょう。それだけできつさからは解放されるはずです。それでも腰を落とさずに上半身を一直線にするという正しい姿勢でやれば、間違いなく腹筋に効きます。これも1回10秒ほど行います。
プランク、膝はつけても上半身は一直線に
Q9.ありがとうございます。最後に、運動に慣れない方がトレーニングをし始めると筋肉痛になる場合もあるかもしれません。ここでサロメチールの出番かと思いますが、いかがでしょうか。
A9.サロメチールには鎮痛作用、抗炎症作用があるジクロフェナクナトリウムが配合されている「サロメチールジクロシリーズ」がありますので、筋肉痛の症状には有効ですね。オーバーワークによる痛みや慢性的に抱えている痛みなどには24時間効き目が持続するテープタイプ(ジクロαやより広い範囲に使えるLα)、トレーニング後に痛みを感じたり、トレーニングとトレーニングの間で痛みを感じたりする場合は広範囲の痛みに塗りやすいローションタイプ(ジクロローション/クールローション)、すばやく塗れ速乾性のあるゲルタイプ(ジクロゲル)を痛みの程度や場所などによって使い分けると良いでしょう。
この記事で紹介された製品
今回の先生
株式会社サンイリオス・インターナショナル
アスレティックトレーナー
宮嵜 多紀理さん
経歴
1978年8月23日生まれ。東京都出身。日本大学卒業。元飛込日本代表。2001年世界水泳選手権女子シンクロナイ ズド高飛込で大槻枝美とのペアで銅メダル獲得。2004年アテネオリンピック高飛込にも出場。鍼師・灸師・按摩 マッサージ指圧師。(公財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、(公財)日本オリンピック委員会医科学強化スタッフ